WEB版 歌集『銀河最終便』 &メモ /風間祥
Finality mail of the Milky Way

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銀河最終便  2章  午睡の時間                 
   



午睡の時間


ソノヒトガモウイナイコト 秋の日に不思議な楽器空にあること
春の雨しずかに降れば黄昏の心満たしてゆく水位線
線虫の名は「シー・エレガンス」月満ちて生まれ生まれる千個の命
宇宙には音の泉があるのでしょう星の音階たどった母船
アレルギー物質一杯溜め込んで痒いのだろう漆、櫨の木
致死量の愛を点滴するように深夜に雫する雨の音
薔薇色の海には死とか永遠が貝殻のように沈んでいます

国立の大学通りの桜も咲く 銀杏書房の洋書に挿む
赤松の林と駅舎、一橋大学のあった国立は遠い
オレンジの瓦の三角屋根が見え 林が見えて崖(はけ)のあの家
丘の上、雑木林と五軒の家 その丘に建つ一棟の屋根
『砂の器』菅野光亮作曲の「宿命」のテーマと加藤嘉と
鬱蒼と樹木は茂り雨粒が羊歯の葉陰に溜まっていった
どんぐりが帽子被って落ちている 華麗な秋のさみしい一個
白い蛾と瑠璃色の蝶ゆっくりとピンで刺されて標本となる

「再見!」とあなたは行ってしまったね 春の日逢った人が春逝く
もう飛べない飛びたい夢ももう持たない東京湾に夕日が落ちる 
そして風!天翔る鳥、火の鳥は光になるよ《グランド・ゼロ》の 
ゆっくりと記憶の野火は放たれて手負いの獣追いつめてゆく
誰よりも愛しているというように春の雪降る、生まれたばかり
薔薇病めば棘もまた病む 桜桃忌・鴎外忌など来る雨季の憂鬱
昨日また誰か死んだね、雨の燕「いつもこの駅で降りていた人」
夏来ればさやぐ身なれば白い旅 水呑む龍が睨む一水

原潜が浮上している春うらら東京湾に立つ蜃気楼  
揚雲雀、力の限り飛翔して悲しみ告げる茜空あり
森の奥静かに水はきよらかに野生の樹林貫いてゆく
『モデラート・カンタービレ』の悲鳴から始まるそんな八章
この星のどこかに必ずいるだろう 反世界にも雨のかたつむり
野の果てにタンポポ枯れて綿毛飛ぶ 日本に帰りたいしゃれこうべ
百手という弓矢の神事 本年の「鬼」を射抜いた射子衆の射子 
熊の仔は走る熊の親も走る 阿寒の冬は終ったらしい

曇りなく晴れた東京 人工の渚に遊ぶヤドカリの群れ
蜘蛛の巣も蟻の巣もあり蜂の巣になるかもしれない東京に住む
水よりも静かに時を刻む音ユンハンス製目覚まし時計
江戸の鐘、ノートルダムの鐘の音、川面に春を告げていた音
金属のベルトの一部が歪んでいる 鈍い光沢、遺品の時計
誰一人待たない故郷と知ったとき柱時計も止まった気配
もう既に死に絶えている血の系図 人気ない夜軋む秒針 
お別れにもう一度だけゆっくりと螺旋階段上る日時計

ホップには薄緑色の花が咲き、夏の雨降る微かに匂う
吊るされしまま削がれゆく鮟鱇の体内にありし頃の水嵩
泥牛蒡、葱がはみ出す袋がある この夕刻の淋しい時間
土蜘蛛は長病みにけり病み臥して心弱りて糸吐きにけり
石たちがお喋りしているカワラヒワ蝦夷山鳥のように日溜りで
きっとこの石そっくりの魚もいて石のふりして眠っているね
ブック・オフに知は百円で売られけり 海を渡って死んだマンモス
病み疲れ病み呆けてもいる花びらが水無月の文になりたいという

金色の筋が燿めく桜色 イトヨリ鯛より細く美しい魚
丸亀藩婆沙羅の系譜、宇和島藩伊達の系譜の綺羅好む血よ
水中に泡見えるとき夏空の青を映した魚がよぎる
河馬がいた動物園の午後の雨 八重桜咲く遅春の雨
あの時もあの日も頼りない風がマルメロの葉をそよがせていた
森の香も清しき樫の木の舟も二人の櫂も流されていた
丸窓や四角い窓を額縁に京都落西錦繍の秋
月の舟、〈お椀の舟に箸の櫂〉絵本の中の舟遠ざかる

レクイエム聴こえて愛の第二章 ページに挿む木の葉の栞
白い花ジンジャー香るこの夕べ花に降る雨、小径の翳り
一度だけ破ってしまうかもしれない「悲の器」にはしない約束
定点で観測してもわからない山襞深く病む人までは
大切な一日のため雨よ降れ しずかにひらいてゆく花がある
風よどむ日の匂いがあるとあなたは言う 海の匂いを伝える手紙 
川沿いの道を歩けば見えてくる海の背中と白い帆船
ひらり 蝶 ひらり ふわり と街川の 流れをこえて春の野に出づ

〈屋根書けば屋根打つ雨の音も書け〉甍に落ちる一粒の雨
吊り革がゆっくり揺れて吊り革の先に透明傘が一本
雨傘はもう要りません私の心を隠す傘はないから
ここに包んできたのはあなたへの愛 でも引用禁止です
てのひらに残るぬくもり月光の生み落したるひかりの卵
石炭を燃やして走る列車なら見えただろうか被弾する森
苦蓬・チェルノブイリの4号炉覆う石棺 雨のロシアの
大根でも洗っていなさい御城下の城下鰈 川霧がつつむ朝

モビールのイルカが泳ぐモビールを動かす春の風があるから
大きな木 勇気・元気と名づけられ雨の公園の真ん中に立つ 
人が死ぬ その時何が起こるのか 花束を乗せた始発電車よ
日曜の海見る丘のニュータウン 殺意の薔薇の棘もびっしり
アメリカの猟奇映画のような事件 その足元をぬらす滴り
廃線のレールがのびてゆく村にひらく月夜の無数の茸 
怨念は砂漠に海に降り沈み夜の底いを流れるオイル
永遠の無国籍軍フェルマータ国境越える蜜蜂部隊

腫瘍G大蝸牛の脳髄に紫陽花を食む花降る時間
リンパ腺、耳下腺腫れて五月闇 灯ともし頃は鬱兆す頃
爆心地グランド・ゼロの記憶より無花果の夕べ滴る乳の
永遠のはらわたを抜く作業して『レ・ミゼラブル』バック・ステージ
しっかりと遺伝子を巻き閉じこもる巻貝にして憎悪のシチュー
たっぷりと大きな愛が注がれて〈地球〉と名づけられて生まれる
マエストロあなたの優雅で繊細な音の海から私は生まれた
閃光に地球は開き天蓋の草原もゆる焼けて爛れて

薄青い鳥の刻印標されて封印された夏の消息
水色の万年筆の筆跡の高瀬一誌と記した太さ
亡くなった政田岑生氏デザインの玲瓏箋の孔雀の素描
郵便の記念切手のその一つ「水辺の鳥シリーズ」の鳥たち
メジロ、カルガモ、モズ、カケス合計420円。鳥獣戯画の鳥の部を貼る
「森の詩」鳥の切手を貼って出す アトリ科アトリさんへ速達
「ふるさと切手・近畿の花」 枝垂桜の白き憂鬱
鹿の絵の郵便切手十円の切手の中の草炎える春

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